【待賢門院堀河】(たいけんもんいんのほりかわ)
長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさはものをこそ思へ
ながからむこころもしらずくろかみのみだれてけさはものをこそおもへ

天山書画
十二単と称される女房装束は、衣を重ね着する処に最大の妙がありまして、季節により時に応じた組み合わせの決まり事さえあって、それは絢爛華麗! 正に世界に冠たる衣装美と言って良いモノ・・・ですが、その豪華な色彩の乱舞をまとめ上げるのはそれを着る女性の黒髪なのです。
長い長い髪の黒色によって全ての色彩をまとめてしまうので、あらゆる色が引き締まり、美しい!
その黒髪が乱れると言うのは・・
これ又趣向の違う美しさを奏でる訳ですが、
男も女自身もそれを知っているからこそ、
このような名歌が生まれたのでありましょう。
思い人の心が変わらないかどうか分からないので、黒髪が乱れるみたいに心も乱れております・・・と言う女性の心理を詠ったのですね。
堀河は文字通り待賢門院に仕える女房でありまして、
待賢門院さま、とは閑院宮公実の娘
藤原璋子(ふじわらのしょうし)
鳥羽天皇の御后様であられまして、崇徳天皇、後白河天皇の御母君ともなられました御方。
この御方にお仕え申しあげていた 女房の堀河・・・
元は前斎院令子内親王
(さきのさいいんれいしないしんのう)
にお仕えしていて、その頃は六条と呼ばれておりました。
崇徳院の悲運にこの和歌をからめ、
物語的精彩を深読みする解釈もあります様で、
つまり、後朝(きぬぎぬ)の歌は、
男がまず読みかけて女が返す。
・・・・・・
この歌も女=堀河、の返し、ですが、
お相手は崇徳院様ではないか??!!
・・・と解釈する説ですね。
と、すれば・・・
必ずしも恋の歌ではないのかも知れず
悲劇の崇徳院との哀しい悲しいお別れ・・・
を詠ったモノ
であるのかも知れません。