享年37歳・・・と前回申し上げましたが、
菱田春草は明治7年9月21日生まれ。
永眠したのが、明治44年9月16日。
ですから、正確には満37歳の御誕生日を待たずに亡くなった訳です。
【落葉】は、明治42年の制作、春草35歳、
【黒き猫】は、明治43年、36歳の時・・・
大天才菱田春草の代表作品は、何れも、その最晩年
つまり、死を意識する頃に生まれたものであります。
晩年は、絵師として致命的なる失明の危機、・・・・
を体感させられて、さらに、
おそらく、自分の寿命が尽きかけている・・・・ことも、
否応なく、分かっていたことでありましょう。
大天才をして、逆境に喘いだとき、
その天才の発露が・・・・真価が、そこに、結実する。
大天才でなく、凡才であっても、逆境を乗り越える・・
逆境に立ち向かわざるを得ない時に初めて、火事場の馬鹿力が出る、
凡才なりに、逃げずに正面から立ち向かった時にはそこそこ良い仕事が残るもので・・・
文字通り命がけで描いた渾身の名作は、失明と絶命の危機から
人として絵師として、ぎりぎりの状況に立ち向かった時に・・・生まれた・・・
・・・・・のであります。
黒き猫 重要文化財指定
落葉 重要文化財指定
以下、部分図
参考・・・同名画題、落葉、屏風作品
かの長谷川等伯も、大天才として知られていますが、
その代表作、【松林図屏風】は、これまた大天才と期待されていた息子の死、
暴君秀吉によって死罪とされ、残虐にも理不尽にも・・・殺された・・・・
その哀しみから生まれたものであります。
慢性腎臓炎による心不全。菱田春草、享年満36歳。