【黒き猫】 菱田春草の代表作
この秋、東京国立近代美術館で、
菱田春草展が開催される事は既にお知らせいたしました。
没後100年を記念しての、大々的なる春草展であり、
大いに期待して良いでしょう!!
日本文化の精粋が、集約されるのですから、
日本らしさを取り戻そうと言う昨今のマインドにも合致して・・・
タイムリーな展覧会だ、と大変喜ばしく思い、皆様にお勧めします。
ダヴィンチもピカソもとうてい・・・・その足元にも及ばない・・・
日本の大天才の作品群が勢ぞろい!!!!
コチラが菱田春草の肖像写真です・・・・・
盟友大観を伴って外遊した折、女性と間違われて閉口した・・とされる程の端正な美男。
百人一首の魅力としての連載に並行して、
今月からは春草の魅力についても大いに語って参ります、
どうぞお付き合いください。
いずれ、国宝指定も当然であろうとされる代表作 【落葉】・・・・
実は・・・同画題で描かれた作品は数点ありまして、
コチラは、失敗作・・・・?
いえ、途中で方針を変えて、改めて作画したので
途中放棄された【落葉】の屏風、部分であります。
ご覧のように、背景に丘? のような・・・ドハ?
地面の起伏が薄く描かれていますね・・・・遠近を表現しようとして・・
クリックして拡大してみてください。
これが、描き直し完成された重要文化財指定の屏風 【落葉】になると、
・・・・ドハは完全に消され、地面の説明は一切無くなり
文字通り落ちている落ち葉だけが克明に描き込まれています。
つまり地面の遠近の説明は一切省いて、落ちている落葉を描くことによって
観者は地面を想起する・・・だけ。
描いている方が説明を省くと、観ている方はそれを補う。
説明をしない方が却って夢が生まれやすい。
見る者の想像に任せる・・・
事象や現象、にとらわれ、実在から離れら切れないと
物事の説明がウルサク・・・、その分ファンタジーは消えてなくなる・・・
日本的な造形原理がここに明示されているのであります。
現代の日本人は、レオナルドダヴィンチほどの写実性には、
やみくもに憧れ、・・・・・
眼もくらむような映像世界に浸りきっているので、
≪写真的な実像≫には必要以上に関心を示し、敏感に反応するが、
省略と誇張とを駆使して、見る目に心地よい美観を生み出そうと
イワユル【余白の美】概念・・・・
に従ってきた日本本来の造形美がわからない。
老いも若きも、カメラ的実在映像に振り回されている時代。
が、
こんな時代でも、【落葉】作品を見れば、その美しさに驚愕せざるをえない。
肝心なところは、生命そのものをつぶさに感じられるほどの
優れた描写を忘れない・・・・・
誇張すべきものと省略すべきものを、しっかり
わきまえて、自由自在に取捨選択し、美しさに変える・・・・・その力。
夭折の大天才、菱田春草。
鳥も、動物も、大地も、歴史も・・・・
すべて描きつくしたその享年は、なんと37歳・・・でした・・・