2011年08月04日

春草の線


前回、線についての春草自身の語りを読んで頂きましたが、



 人を描き表そうとする時・・・・



 日本画の線の意味は、西洋画にあるが如き、物と空間の間。又は、色と色との間にある経界の線ではなくて、釈迦なら釈迦の円満な顔を描かうと思ふをりに、さふ思ふ意味が出るものが即ち線なのです。

 つまり人が一人いる。これを滑稽の人に描かふか、真面目の人に描かふかといふ処に、例へていはば私等は苦心するのです。




 この一例に、春草が憂いの表情を見事に描き分けているところをお見せいたしましょう。



 春草の大天才のなせる業。苦心?(してるようには見えませんが)の在りようをお楽しみ下さい。





 まず、卒業制作【寡婦と孤児】


IMG_3512.JPG


かなり太い線ですね。戦争でご主人を失い、遺されたものの悲哀が、溢れています。顔の線を繊細に、衣服の線を強く、と言う対比が、心のひだを表す巧妙な手段となっています。





次いで、【稲田姫】


IMG_3514.JPG


この方の憂いは、ヤマタノオロチ、大蛇に身を捧げると言う、深刻なもの。寡婦どころではアリマセン。

白装束にして、袂を深く垂らしていることで、引きずる悩ましさを強調しているんですね。 だいじょうぶかしら!!!!





次いで、【王昭君】



IMG_3519.JPG



この女性も、わが身を犠牲にする憂い。敵国の王の下へ、人身御供で遣わされることを自ら選んだ決意まで表現されています。

ほかの人は、その断固たる、献身に驚くのです。もうここには線らしい線も描かれていません。





次いで、【伏姫】




IMG_2403.JPG



南総里見八犬伝に登場するお姫様。



さてこの方の憂いは、どのようなものだったのでしょうか?












posted by 絵師天山 at 23:25| Comment(4) | 菱田春草
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