肉眼で作者の息吹までも感じられるような素敵な観賞の機会は、2014年、北の丸国立近代美術館での、菱田春草展を待たなければならないでしょう。
特別に、この春草という天才の作品群は、繊細優美でありますので、写真でなくホンモノを肉眼で見たときの感動は、生涯忘れられないほどのインパクトがあります。
なんでもなく描いてあるようでも、そこには、深い深い宇宙の神秘さえ描きこまれているのであり、悠久の大儀を感じさせられるのです。春草はこの世の不思議と言うものを、すべて、ごく簡単に見せてくれる大天才です。

茨城県五浦、日本美術院研究所で筆を取る、春草、向こうは若かりし大観。

同じく五浦、天心が建てた六角堂。この写真は創建当時のものですが、今回の大災害で津波に飲み込まれ、跡形もなくなってしまいました。

重要文化財指定の“黒き猫” 情けない程にこの作品のよさは失われていますが、仕方ありません。柏の木の根方にちょこんと座る黒猫です。柏の木は、秋に枯れてしまうのですが、落葉せず、あくる年の新芽が吹く枯れたままくっついていることから、落ちない葉をたたえているので、とても縁起が良いとされているのです。さらに黒猫は福の神でもあります。