2016年08月22日

海外取材

日本人は外国に憧れる必要は微塵もありません。
ただ、たまには、外国の実情を垣間見ることで、
日本人としてどうあるべきか何をしたらよいのか、
を、探るヒントを得る事は必要でありましょう。


しかし、旅行は文字通り垣間見るだけであり
本当にその国の実態に触れることは
なかなかに難しい。


海外旅行は殆どが
その外国のオイシイトコロだけ覗く・・・
のが主目的だから、

例えば、現在オリンピックで賑わっている
リオデジャネイロは、ブラジル一番の近代都市であるけれど
イワユル貧民窟が堂々と実に立派に存在しており
国家権力さえその中では通用しない。
リオに限らず、世界中の大都市という大都市は
それぞれに恥部を抱えており、例外はない、
・・・・のだが、
わざわざ旅行でその事に触れる事はしないので、
海外のオイシイところだけちょこっと覗いて、
楽しい思いでに浸りつつ、日本での現実生活に戻るから
海外の方が良い様な気が、・・・誰でもしてしまうのです。


実際に暮らして見れば日本ほど【恵まれたところ】は
古往今来無い・・・のが、ホントのところ。
おそらく未来も、???


大金持ちの国、スイスでさえ
庶民的な
500円も出せば大満足出来る様な外食産業は存在せず、
高級レストランしかないから
選択肢が無さ過ぎで、物価高のさ中
住みにくい現実を過ごさなくてはならない、
と言う足かせがあるのです。
詰まる所、・・・弱肉強食がまかり通る。
金持ってない奴は人間扱いしてもらえない・・・


あらゆる面において
驚くほど多様に選択肢がある、と言うのは
日本だけ・・・・競争原理は当然
無くなりはしないけれど
弱肉強食とは、少し・・・・・違う・・
のです。


これは日本に住んでみないと解らない、し
先祖代々住んでいるはずの日本人も
案外そこに気付いていませんが・・・・。
自分の事は良くわからないのですね、・・・



世界から見れば、こんな羨ましい国はありません
羨望と嫉視。
不思議な事に、恵まれている日本人は
自分の恵まれ度合いが良く解らず、
外国の羨望と嫉視に根差した侵略意図に
無防備であることが普通。
【平和ボケ】、【オハナバタケ】と、揶揄される所以です。





★   


私の初めての海外取材はスペインとポルトガル。
師匠、今野忠一画伯のお声がかりで、
並みいる先輩日本画家達と共に最年少での参加。
勿論、私は金が無かったのでローンを組んで・・・
帰国して後、毎月3万円払いましたが、
先生にお誘いいただくことが
大変アリガタイことでありましたので
何とか、加えていただいたのでした。
亡くなった方もおられますが、
今でも同行して下さった諸先輩に
御厚誼をいただいており感謝しております。


今野先生としましても
スペインは一度行ってみたい所でありましたそうで
事実、イワユル【絵になる景色】に溢れており
単純な意味でのエキゾチシズムで満ちていて
初学の私には打ってつけの取材地だったことは幸いでありました。
とにかく見るもの聞くもの初めてですから
何もかも面白く感じる、・・・・
取材という目的には非常にマッチしているわけですね。




          
         IMG_2299.JPG
         




第36回春の院展に入選したのがこのスペインの情景を題材とした試作品、
恥ずかしながら、その後「下手クソな絵が残っても」、・・・と考え、
自分で処分してしまいましたが、思いだけは深い作品です。





          IMG_2441.JPG


これは37回春の院展に入選した【オビドス】、
城壁で囲まれたポルトガルの小都市を題材に・・




          IMG_2393.JPG 

【トレド】
首都マドリッド郊外の中世要塞都市から想を得まして・・



          IMG_2449.JPG

【聖塔】
セビリアの有名なヒェラルダの塔をモデルに・・



          IMG_2450.JPG


【マドリッド】
茜に染まる首都マドリッドの夕空を意識して・・・こちらも春の院展出品作品です





このほかスペインを題材にした大作、小品は多く、
初の海外取材は、ささやかな稔りを得て
大変幸せなことでありました。


後にスペインは何度となく訪れる事になり
今でも深い縁を感じておりますが、
押し並べて景色が単純である為に、
初学の者に丁度良い題材が揃っていて
しかも眼に新しい故に好奇心がそそられる・・・
作画のモチベーションとなる要件が
実に良く揃っているのですね。

この事はスペインに限らず外国の風物の殆どは
日本のそれに比べて大雑把で大まかな為に
絵を描く勉強には都合が良い、と言えます。
良く言えば雄大、ダイナミックですが
繊細さに欠ける。
ビックリはするけれど・・・・美しくは無い。
故に未熟な画家の学びには都合が良い訳です。


それに比べて日本の自然、あらゆる風物、は
繊細華麗、しかも、瞬々に移ろふ・・・
その美しさを画面に捉える事はなかなかに難しく
しかもある程度捉え得たとしても、
見る側には【慣れ】がありますから
それほど感心してもらえない。


外国の風物はそれ自体がエキゾチックで
興味をそそり、表現力があまり無くても
描き取るだけで、ビックリしてくれる・・・
感心してもらい易い、・・・





         IMG_2355.JPG 

コチラは、パリのモンマルトルの丘に建つサクレクール寺院、
シンメトリーの美を写真的に描いたもの・・・






          IMG_2364(1).JPG

ドイツ、ノイシュバンシュタイン城、所謂、白鳥城







          IMG_2501.JPG

コチラは、イタリアアッシシあたりの教会がモチーフ





         IMG_2519.JPG 

次いで、シナ。北京の天壇を描いた作品。


 

          IMG_2534.JPG

農村地帯からの取材、田園





          IMG_2351.JPG

大同の石窟大仏





          IMG_2389.JPG

コチラも北魏時代の仏様





          IMG_2515.JPG

洛陽の石造仏





          IMG_2517.JPG

レリーフの礼仏と牡丹





          IMG_2305.JPG

コチラはタイ、・・・スコータイの弥勒仏





          
          IMG_2332.JPG

インド、タージマハル、白陽。





          IMG_2551.JPG

月下のタージマハル





          IMG_2295.JPG

インドラジャスタン地方の風の宮殿(ハワーマハル)





          IMG_2467.JPG

水の宮殿





          IMG_2318.JPG

ネパールの少女





          IMG_2338.JPG

【カッパドキア】トルコ中央部の景勝地





あちらこちら、ずいぶん色々な処へ行きました、


遂には旅行とは言えない秘境、
奥地への取材でチベットやラダックへ。
ムーンランドと呼ばれている殺伐とした地の果てまでも・・・・
標高5000メートル越え!!
地平線の果てまで草木一本ない所!・・・








海外好きの先輩に導かれ、地の果てまで・・・、
小さなスケッチブック広げるのがアホらしくなるくらい雄大な地球の姿も見たけれど
日本人が大好きなハワイにはまだ一度も・・・・

歪んだ形の海外旅行?ばかりだったのが災いして、
今はもう、別に、どこにも興味は湧きません。
老いたからではなく!

もっと、ずっと、ずーーーーっと、
面白い
日本がありますから。
美しい日本と
日本の心こそ
ワクワクするような美の源ですから。



宝の山は日本にしか無い!!!!!!





















          
【日本画の真髄の最新記事】
posted by 絵師天山 at 14:13| Comment(0) | 日本画の真髄
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: