2016年03月28日

魅惑の百人一首 99 後鳥羽院


 【後鳥羽院】

人もをし人も恨めしあぢきなく世を思ふゆえに物思ふ身は

   ひともおしひともうらめしあじきなくよをおもうゆえにものおもうみは






           後鳥羽院.jpg
             天山書画





98番従二位家隆(じゅにいかりゅう)から
さぼって?しまい、・・・・
ずいぶん日にちを費やしてしまいました。
・・・・いよいよ最終、99番は
後鳥羽院さまの御登場であります。
 

百人一首は、
つまるところ・・・・
後鳥羽院さまの御為に編纂された!

と、言い得るので、
定家の意図ももちろん
各時代を担う100人の歌人を採り上げることで
その人となりは勿論、
生きた歴史の真実を和歌によって語らせる
のが、真の目的であり、・・・
その最後、
99番を 後鳥羽院に
100番を皇子、順徳院とする為に
一番から98番までの、名歌、秀歌を綴ったのであり、

それは 後鳥羽院さまが遺された偉大なる鴻業を
最もさりげない形で、普遍なるものとせんが為でありました。


【言上げせず】が日本古来の風習であり
物事の本質から枝葉までカマビスシク、
言説を弄して“とやかく”言い放つことを良しとしなかった訳で、
その代わりに和歌によって表現した
とも言えるのであります。


言いたい放題、は単なる幼児性の表れ、
和歌というフィルターを通して、
さりげなく、しかも、
物事の本質をズバリと
言上げ・・・て・・・・
後の世に共感を伝える・・・

和歌の心が、わか?らん奴は、
野暮も野暮、大野暮!

ナンであります!!!!


この後鳥羽院様は、
後の後醍醐天皇様、明治大帝さま・・・
に良く似てらっしゃる。
この御三方は同じ魂の生まれ変わりかも知れない、と
感じるほどに、近似した人格・・を感じさせます。
和歌の大名人であったという共通点もあるし
御三方の到達された和歌世界の高さ広さ深さは
実に、そっくり・・・・であると
筆者は驚きをもって感得しています。


御承知の様に、後鳥羽院さまは、
鎌倉幕府=北条氏を討って大権を天皇に帰服させ
あるべき日の本の国体を取り戻さんと、
挙兵された・・・のが承久の乱と呼ばれる政変。
天皇を島流しの刑に処す!
理不尽ここに極まる
とんでもないこの結果さえ見事に受け入れられつつ
一方で日本文化の根幹を洗い清め、
さらに掘り下げられた19年にわたる離島でのご生活・・・・



保田 與重郎の名文を借りるならば、

“院の御親征の事情は記録によって察せられるが、それなくともかくもあらせられたと思はれる節が元より多かった。まことにつひに乱戦となった京師に、ただ御一人で雲霞賊中に留まらせられたことは、思ふも畏れ多いことである。古実の学を修められ、一切の文化の復古を指導せられた院が、皇道の御軍を進められるとき、方法様式に於いて、古典の精神を行はれることは、聞かずともかくあることと拝察せられたのである。のみならず隠岐の離れ小島に、なほ十九年の日を御暮らし遊ばされた英邁の御天性を思ふとき、世に類ない豪宕の御気象が心にしみて拝せられるのである。”
(後鳥羽院より抜粋)



後鳥羽院口伝には百人一首撰者藤原定家について
こう、記されています。

“歌見知りたるけしきゆゆしげなりき。
ただし、引汲の心になりぬれば
鹿をもて馬とせしがことし、
傍若無人ことわりも過ぎたりき。
他人の詞を聞くに及ばず。
惣じて彼の卿が歌の姿殊勝のものなれども、
人のまねぶべきものにはあらず。
心あるやうなるをば庶幾せず、
ただ詞姿の艶にやさしさを本体とする間
その骨すぐれざらん
初心の者まねばば正体なきことになりぬべし。
定家は生得の上手にてこそ、
心何となけれども、
うつくしくいひつづけたれば殊勝の者にてあれ”


わからん屁理屈ばかり並べて、あんまり好きじゃあないけど・・・歌は上手いよね、しかしもっと素直に美しく詠えば・・・良いのにねぇ・・と・・・

正に定家の本質そのものを喝破して居られる事に驚きを禁じ得ません。
さりげなく綴られた遺文、後鳥羽院口伝・・・・は、
歌論書、などというジャンルに留めておけるようなアリキタリな、ご文章ではないのです。


西行も良経も、・・・家隆も、
並みいる女性歌人たちも・・・
皆、後鳥羽院と共に時代を担った名歌人達は・・・・悉く、
後鳥羽院様の為にこの世に生まれてきたと言っても過言ではありません。


それはちょうど、後醍醐天皇様の為に全身全霊で尽くした楠木正成が現れたように、
明治天皇様の為に乃木大将が産まれたように・・・・


定家も院の御為に・・・・

しかしそんな至らない?定家の工夫のおかげで、
今日の、やはり至らないわれわれ?にも
百人一首という日本文化のコアがこうして立派に遺されたのでありました。


凄いことです!







posted by 絵師天山 at 17:30| Comment(5) | 百人一首
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