2015年12月25日

魅惑の百人一首 92 二条院讃岐


【二条院讃岐】(にじょういんのさぬき)

我が袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らね乾く間もなし

   わがそではしおひにみえぬおきのいしのひとこそしらねかわくまもなし






            讃岐二条院.jpg
              (天山書画)






「潮が干いた後でも海面には出てこない石は
有るのか無いのか?
有るとしても、常に海中なのだから、
いつも海水で濡れている・・・・
その、いつも濡れている石の様に・・・
人知れず、貴方様をお慕い申し上げております・・」

と言うところでしょうか。

一見、けな気な女性の
熱い思いが表現されているかに見えます。


作者二条院讃岐は二条天皇にお仕えした女房であり
かの源三位頼政の娘。

平家全盛下に汚名を耐えしのび続けた頼政は、
時至って遂に以仁王を奉じて挙兵・・・
結局、潰えたとはいえ
奢る平氏に一矢報いたことに
世間は喝采を挙げた・・

しかし平家の世の中では単なる反逆者。
・・・・・この父、頼政を
「潮干に見えぬ沖の石」と、捉えて、娘は詠じた・・・
と考えれば、俄然、趣が深くなって参ります。

歌詠みとしてかなりの実力者であった
源三位頼政を定家は
大いに認めて居たけれど
百人一首には入れなかった、反逆者だから・・・
その代わりに、この二条院讃岐の詠を採り入れることで
頼政へ最高の敬意を表したのではないか?
と思われるのであります。


反逆者に対する世間の圧力に対して
蔭ながらの篤き応援を感じる訳ですね。


二条天皇崩御の後には後鳥羽院の中宮任子
宜秋門院=ぎしゅうもんいん)
にもお仕えし、長年にわたって宮廷歌人として活躍
父の反逆によっての危うい立場も切り抜けつつ
長命であったそうです。

正に、沖の石の様に、
命がけで正義を貫こうとした父を持った娘として
複雑な心境が見え隠れしているので・・・・。

父を慕う床しい心ばえを想えばあはれはヒトシオに・・・・・。





posted by 絵師天山 at 16:19| Comment(6) | 百人一首
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