2015年09月26日

魅惑の百人一首 85     俊惠法師 (しゅんえほうし)


 【俊惠法師】 (しゅんえほうし)

夜もすがら物思ふ頃は明けやらで閨の隙さへつれなかりけり

   よもすがらものおもうころはあけやらでねやのひまさえつれなかりけり






           syunne.jpg
            天山書画





坊さんなのに恋の歌???!!

思いが届かず悶々として朝を待つナマグサ坊主か?

いえいえ、これは題詠。
「恋の歌として詠める」と、前書があります。

恋する女性になり替わってその心を詠ったもの・・
恋人の連れなさを恨んで眠れずなかなか朝は来ない、
寝返りを何度も打ちながら、悩ましく朝を待つ・・・
陽の射さない戸の隙間さえツレナイわー・・・


この俊惠法師(しゅんえほうし)は、源俊頼の子、源俊頼は
憂かりける人をはつせの山おろしよ烈しかれとは祈らぬものを
の作者でしたね。・・・
父譲りで和歌の道に優れ、しかも超熱心。
歌会など盛んに催して、そのメンバーも豪華!

前回の清輔、源三位頼政、二条院讃岐・・・
平安末期並みいる歌人集団のまとめ役でありました。
独り寝の侘びしさを「閨の隙さへ」と詠んだ処は妖艶。

鴨長明(『方丈記』の作者ですね)の師匠でもあった、
と聞けば単なる生臭坊主である筈はなく・・・・
寝室の戸ビラの隙間がツレナイ!
などと、そう簡単に詠めるものではなく、
涙の別れでドアノブが冷たい・・・みたいな
もののあはれここに極まる!!
それはそれは非凡なる大天才なのであります!


和歌文学も平安末期ともなれば
超がつくほどの熟成をみせ
万葉集の豪快な作風・・・
素朴明快なる感情表現すらも
円熟の技巧によって創り出してしまえる?
・・・・ような名人が続出するのです。


題詠はもちろん、代詠も見事にこなし、
見てきた様な嘘も三十一文字に留め得る力量が
当たり前に・・


国風文化ここに極まるのが平安後期の歌人群、
俊惠法師はそのまとめ役の一人であり、
平安和歌世界の重鎮と言って良いでしょう。






posted by 絵師天山 at 06:00| Comment(2) | 百人一首
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