2015年09月10日

理想美術館 11    円山応挙作 金刀比羅宮襖絵


良く知られた 【讃岐の金比羅山】

正確に言えば、香川県仲多度郡琴平山中腹の広大な神域に多数の社殿、堂宇、書院、楼門、鳥居、などを構え、年間に400万人もの参拝者が訪れる、日本を代表する神社の一つ、金刀比羅宮。

その表書院と奥書院の襖、床の間の壁、等に描かれた円山応挙の大作品群は、応挙の代表作の一つである事は無論、
書院空間の美 ここに極まる 絶品。


今を去る7,8年前、かの東京芸大の美術館で開催された金刀比羅宮書院の美展は、現場を再現し演出して見せると言う御馳走展示。書院の中に入り込んませてもらえる様な感覚に捉えられる展示方法が話題になりました。

各地を巡回の後、確か、フランス ギメ東洋美術館にもはるばる出かけ・・・
応挙だけではなく、現代人に大受けの若冲、岸岱、の障壁画も加わっておりましたので、さらに話題に


            


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             表書院 山水の間




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             同、拡大図



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             山水の間 西南角から







この書院は、勿論庭園が付属しており、
結構と相まって、神域の一部として清楚なる威容をかもしだしていますが、その庭園には
泉水が施されていて、この応挙の手に成る、障壁画の谷川と呼応するかのごとく配置されていおり、
奥書院内に佇めば、大床に描かれた大瀧から水が流れ出し、左手への奔流を、伝って視点移動してゆくと、
その先には障子越しの本物の泉水が水音を立てて流れている・・・という仕掛け。


スバラシイ意匠です。
ずいぶん時代を超えてきたので老朽化は否めないが、古色が加わったとも言えるので、気心の知れた小人数で散策出来れば、それは記憶に残る床しい時間を過ごすことが出来るでしょう。


美術という熟語は明治時代に出来たらしいのですが、
美術館と称して、“コレノどこが美しいの??” とハナハダ疑問が湧きに沸くおかしな施設が目白押しの今日、
老若男女、時代国籍を問わず、普遍なる美しさを十二分に湛え、少なくとも美術と言うに相応しい列品を揃えてさらにその美を増幅してしまう仕掛けをも誂えるのは、むしろ、日本人の美意識として当然ではないかと、私は思うのです。


コケオドシ、や、およそ美とは縁遠い仕掛けで脅かすのみ。
騙されるのは、始めだけ、・・・・二度と誰も来ない様なシロモノを
美術と言うな! 美術館と名乗るな!!・・・と。言わせていただきましょう。


ついでに、絵を描きたい側へも、(自嘲も含めて)
自分だけに通用する価値観で済ますな!
ただの独りよがりを美術と言うな! 
その程度で、絵を描いてます私・・・
などと言いたもうな!!
単なる写実、映像の乱用、自分にとって新しいだけ、
・・・・そんなのは美術ではなーーーい!!

もっと真面目にヤレ!!!


円山応挙は、
名人というものはこう言う存在である!
・・・ということを、明示した大天才でした、
しかも単に天才というだけでなしに
天才を名人の域に高め尽くした。


This is Nihonga!!

余白の美、ここに極まる名品を描き出しています。
この人に比べれば、伊藤若冲などは幼稚園児くらいのレベルなんだが、
どうしたことか昨今は、現代病とも言える空間恐怖症に陥っている人が多いらしく、余すところなく空間を埋め尽くしてある方が安心するらしい・・・・余白の美がわからなくなって久しい・・・・。



この所秋雨続きでイライラしているせいか、
人の批判がズルズル出てきます・・・・自分のことは置いといて




思わず魅せられるような、美しさで溢れているのが私の理想美術館ですから、作品群の高さも勿論だが、それを活かす仕掛けも最高級でなければなりません。この金刀比羅宮書院のように、自然の美と人口の美とを上手くマッチさせた、あまりの魅力にうっとりとしてしまう様な意匠を凝らしに凝らしたいものであります。






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この襖絵群すべては、金刀比羅宮の書院にあるから素晴らしいので、
この意匠にあやかった立派な施設を整え、
環境をも生かし、そこにしか成り立ちえない美を創造した上で、
理想美術館の一部として、新たに造りあげられたら・・・・と念願しています。



もう一点、私の大好きな応挙の作品はこちら、
月に桜の図





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薄っすらと満月が背景に描かれているのがお分かりでしょうか???

この作品は現在、冷泉家の所有であり、
御子左家、長い伝統のほんの近代に収集したコレクションの一点。
日常の暮らしの中の応挙作品を肌で感じられる貴重な一点であります。



ついでに、若冲の書院床の花鳥図もご覧いただきましょう。





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金箔の砂子を施した画面に、丁寧に植物図鑑の様に描かれています。
【余白の美】は、完全に無視してますね。
現代人にはこの方がウケル???









 

  





posted by 絵師天山 at 14:12| Comment(3) | 理想美術館
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