2015年09月02日

魅惑の百人一首 81    後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)


【後徳大寺左大臣】(ごとくだいじのさだいじん)

時鳥鳴きつる方をながむればただ有明の月ぞ残れる

   ほととぎすなきつるかたをながむればただありあけのつきぞのこれる





          tokudaiji.jpg

           天山書画





ホトトギスの鳴き声を聞いたことがありますか?
テッペンカケタカ・・・・とか言うのですけど、
春過ぎて夏を迎える頃、それは心に沁みる声なのです・・・

あちらの方角から聞こえたなあ・・・と
その方角を眺めてみると、
おや、・・そこには、
黙したままの有明の月をみつけましたョ
・・・という体なのでありましょう。


ホトトギスの鳴き声がイメージとしてはっきり浮かび上がる人は勿論この気分も良く分かる・・のですが、はっきりとホトトギスの声を定める事が出来ない方でも、この和歌の余韻によって、気分は想定できるのではないかと思うのです。


初夏の青葉の香りを想起させてくれるのですね。

野鳥の声、さえずり、はそれはそれは美しいものだから・・・

山間の宿に泊まり翌朝早くに鳥の鳴き声で目が覚める・・
なんて、超ゼイタク!!


どんな鳥か、何という名前か、どんな風に鳴いたのか!
そんなクダラン詮索はドチラデモヨロシイ!


とにかく沁み入るような緑の中に浸る空気感を野鳥が代表してくれている訳ですから、ホトトギスであろうと何だろうとカマワナイ!・・が、しかし、誰しも心地よい行楽の季節である初夏、を代表してくれるのは・・・やはり、ホトトギスなんでしょうね!

この作者は藤原実定。
後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)
は、追号であり徳大寺実能の孫。右大臣公能の子、
母は権中納言俊忠の娘・・
つまり俊成には甥であり
定家とは従兄弟に当たるのです。

平清盛の福原遷都後に荒廃した平安京を見て
“旧き都を来て見れば浅茅が原とぞ荒れにける
月の光はくまなくて秋風のみぞ身にはしむ”・・と
詠じたのがこのお方。
平家物語にも登場しております。


詩歌管弦に優れ、世才にも長け、
大変な蔵書家であったことも伝えられており
並みいる歌人たちの良き理解者であられた様です。





posted by 絵師天山 at 06:00| Comment(3) | 百人一首
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