2015年08月30日

魅惑の百人一首 78   源兼昌(みなもとのかねまさ)


【源兼昌】(みなもとのかねまさ)

淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守

  あわじしまかようちどりのなくこえにいくよねざめぬすまのせきもり





      kanemasa.jpg

     天山書画





「幾夜寝覚めぬ」 幾夜目を覚ましたであろうか・・・
須磨と言えば明石、
須磨、明石と言えば、・・・・・源氏物語。
不遇時代の光源氏を想い起こしますネ。


源氏物語の須磨の巻に・・・

まどろまれぬあかつきの空に千鳥いとあはれに鳴く・・・

「友千鳥もろごゑになくあかつきは一人寝覚めの床も頼もし」

とあり、

もろごゑ、は諸声。
群鳴く暁は、床で目が覚めて孤独に泣いてしまっても
お仲間が居て頼もしいなあ・・・、


弘徽殿女御(こきでんのにょうご)一派から恨まれ、左遷の憂き目に遭っている光の君の心情が千鳥と共に詠われており、これを本歌としたものと思われます。
源氏物語は思った以上に和歌が多く含まれ、この物語に心酔した人は数知れないのですから、当然本歌取りも良く行われていたのです。
もっとも古く万葉集にも須磨は歌枕として登場しますので、さかのぼればどれ位以前から人々は須磨への想いを描いて来たのか、解らない位でありましょう。
もともと海辺であり、海女や藻塩と結んで題詠の材となっており、勿論関守も同様、旅心を詠うにかっこうの題材でありました。


源氏物語がまとまった草紙になって約百年が過ぎ、歌枕としての面目も新たにした須磨の情景を思い浮かべれば、更なる余情を感じさせられる…という仕掛けになっている、・・・この歌はいつか、一服の名画に託さねばなりませんね。

“行平の中納言も 関吹きこゆる と言ひけむ浦波、夜々は げに いと近う聞えて またなく あはれなるものは、かかるところの秋なりけり”(源氏物語 須磨より)

在原行平が謫居(たっきょ)した地でもあり、
須磨という画題で、いずれ絵画化してみたいと思います・・・

時を超えて楽しみを共有してきたのが日本人の文化史ですから
歌枕もその為。・・・須磨はその代表格という訳で・・・・。

実際、瀬戸内の情景が目に浮かぶ・・・


このところ例年だと残暑でギラギラしているのに
早くも秋の長雨状態・・・虫の声も聞こえ、秋の夜長・・
秋こそ芸術です。



posted by 絵師天山 at 23:04| Comment(3) | 百人一首
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