2015年05月31日

魅惑の百人一首 71   大納言経信 (だいなごんつねのぶ)


【大納言経信】(だいなごんつねのぶ)

夕されば門田の稲葉おとづれて蘆のまろやに秋風ぞ吹く

   ゆうさればかどたのいなばおとずれてあしのまろやにあきかぜぞふく






             tunonobu.jpg
               天山書画






「おとづれて」は、「訪れて」ではなく
音を立てて来て・・・・の意味。
門前の田んぼの稲が風で擦れ合って音を立て・・ 
 

「蘆のまろや」は芦で葺いた屋根の仮小屋、のこと。
実りの秋の夕方をテーマに詠んだのでしょうか・・

作者経信は、宇多源氏の流れ、
藤原道方の息子、
和歌だけでなく琵琶に長じ有職故実にも詳しく
藤原頼通の摂関時代に重用され、
正二位大納言に至る大活躍。
俊頼の父、後出俊恵法師の祖父でもあります。

夕されば=夕方が来ると・・・
この、夕されば の出だしが効いていますネ
「稲」と「蘆」と
「門田」と「まろや」と、
何か良い、・・・床しい響き・・・
秋風が身に沁み入る…気配


技巧を凝らしたわけでもなく
スッキリと詠んで
口説くでもなく、社交でもない、
和歌の為の和歌・・・・と言うか
純粋芸術の香りが仄かに・・・

用を伴わない美と言うのは
絵画の世界においても珍重される事。

素直なる感傷の表出こそ
深い感動をさりげなくもたらすものでありましょう。


しかし、実は「まろや」は梅津という地の山荘で相当立派な別荘であったらしく、その前に広がる田も肥沃で広大なる田圃であり、つまり、実景を詠ったのではなく「田家秋風」という題詠であったことが分かっています。
写実絵画からはファンタジーが生まれにくいように、心象としての大人の和歌、と言うべきではないでしょうか。





posted by 絵師天山 at 08:00| Comment(2) | 百人一首
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