2015年05月12日

魅惑の百人一首 67 周防内侍 (すおうのないし)


【周防内侍】 (すおうのないし)

春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ

   はるのよのゆめばかりなるたまくらにかいなくたたんなこそおしけれ







             suounonaisi.jpg
               天山書画






二月ばかり月のあかき夜
二条院にて
人々あまたゐあかして物語などし侍りけるに
周防内侍よりふして枕をかなと
忍びやかにいふを聞きて
大納言忠家
是を枕に   とて、
かひなを御簾の下より
さし入れて侍りければ
詠み侍りける


なんとも艶めいた、春の夜の夢の様な詠であります。

『甲斐なく』、と『かひな(腕)く』とが掛けられております。

枕の代わりに自分の腕を差し出す男

女の方は、悪い気はしないまでも、
そんな、安っぽい事言っちゃって、
浮き名が立ってしまうじゃあないの!

戯れ事の夜物語ですかね、


しかし、とっさに出た歌にしては上等
『春の夜の夢ばかりなる手枕に・・・』
こういう上の句はなかなか思いもよりません。
見事!一本!
いかにも優艶 耽美。

作者周防内侍の才気はなかなかのものであります。

忠家の返しは

契りありて春の夜ふかき手枕をいかがかひなき夢になすべき

(大意:前世からの深い縁があってこの春の深夜に差し出した手枕なのに。それをどうして甲斐のない夢になさるのですか。)

コチラは、若干軽く、ソコソコのお返事でした。



この場合の二条院は道長の五男関白教通のお邸。

但し周防内侍が仕えていた
後冷泉天皇の中宮章子内親王は
「二条院」の院号を宣下されているので、
その御所であるとも考えられる様です。
いずれにせよ、
大納言忠家も周防内侍の才気には
脱帽  、というところでしょうか。




 『栄花物語』続編において、
姫君の中の姫君として章子内親王は登場します。
父は道長の孫天皇、母は道長の娘で、
幼い頃すでに最高位である一品に叙せられ、
後冷泉天皇の中宮、
御子がなく国母にはおなりにならなかったものの
女院の称号を戴くなど、(これは異例の事・・・
当時最も高貴な女性の一人でありました。
周防内侍はこの方に仕え活躍したのですね。








posted by 絵師天山 at 09:00| Comment(4) | 百人一首
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