2015年03月23日

魅惑の百人一首 59  赤染衛門(あかぞめえもん)

【赤染衛門】(あかぞめえもん)

やすらはで寝なましものをさ夜更けて傾ぶくまでの月を見しかな

   やすらはでななましものをさよふけてかたぶくまでのつきをみしかな





           akazome.jpg
            天山書画





ためらわずに寝てしまえば良かったのに
あなたがお越しになるかも知れないので
待ちわびて月が西の山に傾くまで見てしまいました・・・
と、言うわけですね。


“やすらはで”は、ためらう、躊躇する、こと。
小夜ふけての“さ”が良い。
夜が更けてでは可愛らしくないし
さよ=小夜、が効いています。


“なかの関白 少将に侍りける時、
はらからなる人に物いひわたり侍りけり、
たのめてこざりける
つとめて女にかはりて詠める”


『なかの関白』は、
中関白道隆(妻は前出儀同三司の母)
藤原道長の兄でしたね。

『なかの関白』家、と言えば始めはときめいて、
後、お気の毒な運命を辿る
頂点を極めた道長の陰に甘んじてしまった家系。


道隆がまだ蔵人少将であった頃に
作者赤染衛門(あかぞめえもん)の姉妹と情を交わしあっていたけれど、
心当てにさせながらも結局来なかった翌朝、
姉妹に替わって代作してあげた恨み歌なのであります。


さすが名人
代作とは思えない程に親身なる心情に溢れており、
作者自身にも思い当たる経験があったものか、
男の不実な約束やぶりを恨みながらも、
男のことなんか忘れようとして?
山の端に沈みかける月に向って精一杯感情移入している切ない女心・・・・


なぜ赤染衛門(あかぞめえもん)などと、呼ばれているのか?
それは、右衛門尉(うえもんのじょう)赤染時用の娘だったから・・・


母は、始め平兼盛の妻だった、
が、妊娠したまま離縁して時用に嫁ぎ彼女を産んだので、
実父は平兼盛なのかも・・・・。


道長の妻倫子(りんし)に仕え中宮彰子(ちゅうぐうしょうし)にも仕出した後、大江匡衡(おおえのまさひら)に嫁し、長寿を得てお幸せに暮らしたとか・・・・

ケレン味のない穏やかな作風ながら
溢れだす真情、
ほとばしるような情熱さえも
賢い理性でコントロールできてしまうお人柄・・

一見あっさりしてるけれど
実は非常にバランスの取れた才媛・・・・。
代作の名人でもあり、
誰もが好感を抱く作品が多いのです。







posted by 絵師天山 at 05:00| Comment(4) | 百人一首
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