2015年03月22日

魅惑の百人一首 58  大位弐三(だいにのさんみ)

【大弐三位】(だいにのさんみ)

有馬山猪なの篠原かぜ吹けばいでそよ人を忘れやはする

   ありまやまゐなのしのはらかぜふけばいでそよひとをわすれやわする
  




            daininosa.jpg
             天山書画





『猪名の笹原』
という歌枕が共通項=前提、になっています。
猪名はゐな。つまり否。
有馬山は神戸六甲山あたり、有馬温泉方面のこと。
ずいぶん昔から手頃で身近なリゾート地であり
『猪名の笹原』はその中でも少々ウラ淋しい処として
人の心に『寂しさ』を想起させる印象的な地なのです。

歌枕の効用で、
『猪名の笹原』といえば誰もが『寂しさ』を感じる仕掛け。


前書きには
“離れ離れなる男のおぼつかなくなどいひたりけるに詠める”
とあり、最近トンとご無沙汰になっているくせに、
“おぼつかな”・・・・などと、
何を思い出したのか図々しくも女性の心を疑ってみせた・・
そのトンチンカンなる男に向けて言い返した歌なのであります。

女性の方には男の不実さがとっくに知れている・・・


“そよ”と言えば、そよ風、ですが
それを“そよ人”と言ったのは
そよ風みたいに頼りない男、というイメージが込められ
“おぼつかな”と言って寄こしたことを捉えて、
いでそよ人・・・・さあ、そこですよ
どうして私が忘れたりしましょうか!
お忘れになったのは頼りないあなたの方でしょう!!!
と、ヤンワリ言いかえしている訳ですね。


角を立てずに、相手の不実を正してやり返す。
鮮やか、かつ微妙?な心境の佳作であります。


紫式部を母に持ち中宮様にお仕えし後冷泉天皇の乳母ともなられたお人ですが、
母に劣らぬ才媛であったのでしょう。
大位弐三(だいにのさんみ)と言う呼称は、
正三位と言う位で大宰府大弐(だざいふのだいに)と言う役職に就いた
高階成章の妻となった故の呼名。
藤三位(とうのさんみ)とも呼ばれたので、
何しろ天皇陛下の乳母ですから、偉い!!



posted by 絵師天山 at 05:00| Comment(3) | 百人一首
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