2015年02月16日

理想美術館 5  今野忠一作 【富士】


今野忠一作 【富士】




        tyuuiti fuji.jpg






天地の 分かれし時ゆ

神さびて 高く貴き

駿河なる 布士の高嶺を

天のはら 振り放け見れば

渡る日の 影も隠らひ

照る月の 光も見えず

白雲も い行きはばかり

時じくぞ 雪は降りける

語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ

不尽の 高嶺は


田子の浦ゆうち出でてみれば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける

               山部赤人 万葉集巻三


歌聖、と称され、和歌の神様として祭られている 
柿本人麻呂、の柿。そして・・
こちらも歌聖と呼ばれた・・
山部赤人、の山。
山と柿とで山柿の門、と言うと・・・、
和歌の世界のこと・・


何れ劣らぬ万葉を代表する名歌人でありますが、
紀貫之などは、赤人の気宇壮大なる歌は
名人、人麻呂にも優る、と言っております。

富士山を詠った和歌は沢山ありそうで・・・すが・・・
なかなかこの歌以上に印象に残る和歌はなく、
探しても見つからないところを見れば、
不二を詠うことの難しさに到り

当然絵にすることの難しさも・・・感じさせられてしまう。

本当に富士山を描くことは難しく、
どんな名品とされる絵でも、
ホンモノの富士山から誰もが感じる、深さ、高さ、広さ・・
その他・・あらゆる好印象を凌ぐ様な絵画は、
めったに・・・・
御目にかかれません。


幼児でも富士山は描けるし
だれでも富士山を描こうと思えば一応は・・描ける?が
誰もが称賛、賛嘆するほどのモノは、まず、・・
難しい・・・


この作品は、奈良県知事が正真正銘、
人麻呂の末裔である柿本知事であった当時に
奈良県立万葉文化館建設構想が持ち上がり、
万葉集の秀歌を絵画化して展示保存する企画が実行に移され
当時現役の巨匠から有力新人まで
百数十人が一人一歌を担当して力作を寄せたことがあり、
この赤人の名歌に相応しいとして
私の師、今野忠一は特別にこの名歌を指名され、
それに師匠が応えた結果がこの作品に結実したのでした。


万葉集を代表する様な名歌は先生の様な巨匠が担当したのです。

ちなみに、私は、自分で選んだ大津皇子と石川郎女との恋歌を担いました・・・



これこそ言語を絶する名作であります。

実にスバラシイ!

説明は要りませんね。


是非にも私の理想美術館に展示したいものでありますが・・・
現在は奈良県の所有ですから、
議会の採決で認めてくれなければ個人の所有に移るはずもなく、
今のところ到底不可能でありましょう・・・・
処置なし・・・かな?!


作者、師、今野忠一先生が
自作についてコメントを遺されております。






『きわだって美しく崇高な不二の山というものへの美意識は、万葉時代の人々にも現代の私たちにも同じように受けつがれているものと考えられますが、
さて実際に描くとなると、万葉の歌の中に詠まれていると推察される場所からの不二を説明的に表現するか、あるいは、自分のもっとも感動を覚えたと思う不二を描こうか迷いました。
しかし、不二の崇高で神秘的なものが、そして自分の感動が少しでも表現できたら、それはそのまま万葉の人々の心につながるものであろう、と思いました。
あらためて静岡県、神奈川県、そして山梨方面と、場所や季節、時間を考慮し、
写生を致しました。結果、自分のもっとも感動を得た、と思う不二を描くことに致しました。』












posted by 絵師天山 at 16:22| Comment(4) | 理想美術館
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