2015年01月31日

魅惑の百人一首 55


【大納言公任】 (だいなごんきんとう)

瀧の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞えけれ

   たきのおとはたえてひさしくなりぬれどなこそながれてなおきこえけれ





          kinntou.jpg
           (天山書画)




こちらは、たなぼたの和歌。
えっ?何の事?
棚から牡丹餅・・・・


瀧の『た』、絶えての『た』、なりぬれの『な』、名こその『な』、流れての『な』、なほの『な』、
『た』、から『な』、へ繰り返して変容してゆくゴロの良さだから
・・・・『た』『な』ボタ・・・


大納言公任(だいなごんきんとう)はかの道長全盛期に正二位大納言まで登り詰めた俊英。

大納言は大臣に次ぐ官だから、今で言えば次官?か?な?
・・・・とにかく高官。
歌人、歌学者として抜きん出て、詩歌管弦の才あふれ、
その活躍ぶりは道長とその取り巻きを大いに喜ばせました。

この歌は道長のお伴で大覚寺へ行った時のもの。

その昔嵯峨上皇が造ったと聞こえる瀧が今はもうないけれど、
その名は尚有名なままですねぇ・・・


『た』『た』『な』『な』『な』・・・・とやって、大いに盛り上がり、
道長の覚えもメデタカッタ!
・・で、いよいよ重用される様になりました。
つまり、人の拵えたものを拝借して、
ちょこっと歌にし・・・・
昇進しちゃった・・・
これはホントの棚から牡丹餅・・・

しかし、歌としての出来栄えは相当なものですから
・・・『た』『な』ボタだし、
下の句の『な』音の後に『ら行』を重ね、
歌の調べを補強するカタチになっている、とか・・・
遠足気分で参集した道長一行は
実際この歌に喝采を惜しまなかった事でありましょう。
・・・・芸の冴え!
と言って宜しい。


ところが、“ごますりのヨイショ野郎!”
と蔑む向きも有りましたようで、
評価だだ下がりのこともあったとか・・・
高官といえど、宮づかいはツライ・・・


恋の歌が続いて、少々重たくなった頃合いに、こんな軽妙な和歌を配列したのは百人一首撰者藤原定家の明と言えましょうか。






posted by 絵師天山 at 10:00| Comment(0) | 百人一首
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