2014年12月20日

魅惑の百人一首 46


【曽禰好忠】 (そねのよしただ)

由良のとを渡る舟人梶を絶え行方も知らぬ恋の道かな

   ゆらのとをわたるふなびとかじをたえゆくえもしらぬこいのみちかな




sone.jpg
天山書画






叶わぬ恋の歌が続きます・・・・コチラも・・
満たされた心とは程遠い感じですね・・

「由良のと」、とは由良の門。
狭くなっている出入り口。水門。
海峡ですね、丹後の地「由良」(ゆら)であろうとされています。


「梶を絶え」の梶、は、「ろ」=櫓(ろ)や櫂(かい)・・・オールですね。

絶え、は梶を繋ぐ緒が切れて・・・と言う意味で、つまり
漂流してしまった。と言うことになります。

満たされ、結ばれ、幸せいっぱい・・・・
実る恋では歌にはならないのかも知れません。


波間に漂う木の葉の様な不安な心地を表出しているのです。

広い大海原に梶を失ってたゆとふ小舟・・・


作者曽禰好忠は卑位卑官。
生没年さえ確かではありませんが、
あの名歌人中の名歌人!とされる和泉式部と並んで平安中期異色の歌人と称されることもあり、自由で清新なる作品が多いのです。


こちらも名歌人とされた後京極摂政良経(ごきょうごくのせっしょうよしつね)も、この歌を本歌として秀歌を残しています。


“梶を絶え由良の湊による舟のたよりもしらぬ奥津塩風”

   かじをたえゆらのみなとによるふねのたよりもしらぬおきつしおかぜ


鎌倉幕府の横暴で隠岐の島流刑の憂き目に遭わされたかの後鳥羽上皇さまは、流刑地に於いても勅撰和歌集編纂に力を注いでおられましたが、
その右腕と頼みにされておられた九条良経も、この好忠作品を非常に好んでいた証しでありましょう。

この和歌には又別の解釈もあります様で・・・・

荒波に梶を獲られてしまった!・・・と言う
つまり、
頼むべき思い人を失ってしまった!と・・・・
激しい失恋を詠んだのかも知れません。

それらを考え合わせればこの作品は相当な深さがあり、たゆとふ様な恋路の儚さを万人に共感させる名歌、と言うことになりましょうか。

他の名人達の陰に隠れた曽禰好忠の才能を改めて感じさせられるのであります。









posted by 絵師天山 at 15:00| Comment(4) | 百人一首
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