2014年12月18日

魅惑の百人一首 44


【中納言朝忠】 (ちゅうなごんあさただ)

 逢う事の絶えてしなくばなかなかに人をも身をも恨みざらまし

   あうことのたえてしなくばなかなかにひとをもみをもうらみざらまし




      asatada.jpg
       天山書画






悲恋のおもむき・・・片恋なのかも知れませんね。
何れにせよ、満足とは程遠い恋歌であります。
“なかなかに”なんて言葉、・・・
それこそなかなか和歌に用いるものでもないでしょう。
この場合は却って、と言う意味です。


いっそ、逢うこともなければこんな恨みがましい心さえ浮かばなかったでしょうに・・・
と、嘆いている訳です。
口ずさんでみれば、調子の良さに感心させられる歌でもあります。

在原業平の有名な秀歌
“世の中にたえて櫻のなかりせば春の心はのどけからまし”
と、意味は違いますが表現の仕方が良く似ているのです。


桜なんかいっそ無くなってしまえば
こんなに心騒ぐことも無いのに・・・と言う訳。


なまじあなたなんかに逢ってしまったもんだから・・
こんなに心騒ぐじゃあありませんか、
いっそ逢わなければよかったのに・・・・
ステバチにさえなっているのですね。


中納言朝忠がこの和歌を詠んだのは51歳の時。
・・・とすれば、これは老いらくの恋か?
昔日の述懐か?

何れにせよ誰にも共感を得られる名調子、
笙の名人であった、と伝えられるのもさすが、と言うべきでありましょう。






posted by 絵師天山 at 15:00| Comment(4) | 百人一首
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