2014年10月11日

魅惑の春草 I 月を描く


大名人春草は月を描かせても勿論超一流!

世に、
“雪月花”(せつげっか)とか
“月雪花”(つきゆきはな)・・・とかいって
この三つの内一つでもモノに出来れば、
一流の画家、とされる。

雪が描けるか?・・・とは
雪の降る音が描けるかと言うことであり、

月が描けると言うのは、
月光を顕せるか?であり

花が描けると言うのは、
その香りを描ける・・・こと・・・

ハハーン、絶対無理!
と思っているアナタ、
春草はそのどれも容易に達成しています。
しかも、さしたる苦労はしていない。
様に見える・・・
苦労が覗く作画では、決して快味は得られないから・・・

観て心地よいのが絵画の魅力であり、
理屈とか、努力とか・・
まして苦労なんか出てはならないのです。
先入観など何もなしで、思わず魅せられる!
のが、ホンモノ!!



コチラは・・・【美人観菊】明治34年作 134×54p


             tuki  x.jpg





元禄時代くらいの女性をテーマに、秋の爽やかな空気を描いて、あたかも月の光を浴びているよう・・・
必ずしも月光があるとは言い切れないけれど、日中の日差しとはとても思えない風情・・
月を描かずして月光を感じさせている・・・・


コチラは、【仏御前】 明治39年作 117×48p





          tuki m.jpg 






画面左上に半月が、かそけくも・・・描かれており
弱い光芒を感じさせて、
やはりこれも黄昏・・とか・・・月が出てきた夕刻の気配
平清盛に寵愛され、
同じように寵愛を受けた妓王と妓女姉妹の白拍子は
誠に儚く没落してしまった事を知り
諸行無常を悟って姉妹の侘びた庵へ向かうのが、
このシーン。・・・・仏御前。
彼女もやはり都で騒がれ持て囃された人気白拍子でした。 
 





次いでコチラは、【月の出】明治41年作 107×41p





             tuki jj.jpg





月がテーマなのに月はナシ!
これから出てくる月を描いた・・・
紫がかった樹木に覆われた山嶺・・
小滝の姿だけが僅かに浮かび上がります。
クリックして拡大してください、
図録からの映像ですから、臨場感は大いに不足していますが
鎮けさ・・・荘厳さ、
かそけき光が、光芒に移るその間際・・・
素晴らしい創意と見事な技
≪思わず魅せられる≫、とは正にこの事であります・・・

いったい・・・・・
これから出てくる月・・なんか描けます??
             




さらにコチラは、【月夜清波】 明治40年作 117×49p






           tuki kk.jpg





海上に浮かぶ、雲隠れのお月さま・・・
雲の向こうの光芒を冴え冴えと表わすために
美しい灰色がごくごく微細な変化を留めて彩色されています。
その為に海の緑と月の白とがまるで宝石の様に輝いている・・・
雲と波とが連動する動きの中に溶け込んで、
いつまでも観ていたい・・・・



海上の月は他にも何点かあり、
コチラは、【月下波】 明治40年作 116×50p






          tukioo.jpg




 
岩礁と千鳥を配して、
月の光も幾分温かい感じ
月光を楽しむが如く、
あたりの景物が登場しております。




雁が登場すると
コチラは、【月下雁】 明治40年 104×41p





         IMG_3580.JPG 







         IMG_3581.JPG

   【月下の雁】 明治40年作 104×40p




描いているのは、雁だろうけれど、
テーマは月の光・・・・・
月明かりが描ければ、あとはもう何でも描ける。

春草に与えられた天才は、実に実に・・・
広くて深いのです・・・
この御方に一歩でも近づくことが
現代の絵師の目標!
・・・・でなくてはなりません。

クダランものに囚われて・・
真を捉える事・・・
一番大切な事を忘れてはならないのです。
どこぞの亜流に流されている場合じゃあないんです!!

日本画を目指している人は
どんな事があっても、
この春草展だけは観なくては!

それ以上に大切なことは、今、何もない・・・・・のです・・・・


          





菱田春草展

会期  2014年9月23日(火・祝)〜11月3日(月・祝)

会場  東京国立近代美術館
    (〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1)
     http://www.momat.go.jp/

開館時間  午前10時〜午後5時(毎週金曜日は午後8時まで)
       *入場は閉館の30分前まで

休館日  毎週月曜日(ただし10/13、11/3は開館)、10/14(火)

主催  東京国立近代美術館、日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション

協賛  損保ジャパン日本興亜、大伸社

協力  旭硝子

助成  公益財団法人ポーラ美術振興財団

お問合せ  03-5777-8600(ハローダイヤル)





posted by 絵師天山 at 16:00| Comment(0) | 菱田春草
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