大名人春草は月を描かせても勿論超一流!
世に、
“雪月花”(せつげっか)とか
“月雪花”(つきゆきはな)・・・とかいって
この三つの内一つでもモノに出来れば、
一流の画家、とされる。
雪が描けるか?・・・とは
雪の降る音が描けるかと言うことであり、
月が描けると言うのは、
月光を顕せるか?であり
花が描けると言うのは、
その香りを描ける・・・こと・・・
ハハーン、絶対無理!
と思っているアナタ、
春草はそのどれも容易に達成しています。
しかも、さしたる苦労はしていない。
様に見える・・・
苦労が覗く作画では、決して快味は得られないから・・・
観て心地よいのが絵画の魅力であり、
理屈とか、努力とか・・
まして苦労なんか出てはならないのです。
先入観など何もなしで、思わず魅せられる!
のが、ホンモノ!!
コチラは・・・【美人観菊】明治34年作 134×54p

元禄時代くらいの女性をテーマに、秋の爽やかな空気を描いて、あたかも月の光を浴びているよう・・・
必ずしも月光があるとは言い切れないけれど、日中の日差しとはとても思えない風情・・
月を描かずして月光を感じさせている・・・・
コチラは、【仏御前】 明治39年作 117×48p

画面左上に半月が、かそけくも・・・描かれており
弱い光芒を感じさせて、
やはりこれも黄昏・・とか・・・月が出てきた夕刻の気配
平清盛に寵愛され、
同じように寵愛を受けた妓王と妓女姉妹の白拍子は
誠に儚く没落してしまった事を知り
諸行無常を悟って姉妹の侘びた庵へ向かうのが、
このシーン。・・・・仏御前。
彼女もやはり都で騒がれ持て囃された人気白拍子でした。
次いでコチラは、【月の出】明治41年作 107×41p

月がテーマなのに月はナシ!
これから出てくる月を描いた・・・
紫がかった樹木に覆われた山嶺・・
小滝の姿だけが僅かに浮かび上がります。
クリックして拡大してください、
図録からの映像ですから、臨場感は大いに不足していますが
鎮けさ・・・荘厳さ、
かそけき光が、光芒に移るその間際・・・
素晴らしい創意と見事な技
≪思わず魅せられる≫、とは正にこの事であります・・・
いったい・・・・・
これから出てくる月・・なんか描けます??
さらにコチラは、【月夜清波】 明治40年作 117×49p

海上に浮かぶ、雲隠れのお月さま・・・
雲の向こうの光芒を冴え冴えと表わすために
美しい灰色がごくごく微細な変化を留めて彩色されています。
その為に海の緑と月の白とがまるで宝石の様に輝いている・・・
雲と波とが連動する動きの中に溶け込んで、
いつまでも観ていたい・・・・
海上の月は他にも何点かあり、
コチラは、【月下波】 明治40年作 116×50p

岩礁と千鳥を配して、
月の光も幾分温かい感じ
月光を楽しむが如く、
あたりの景物が登場しております。
雁が登場すると
コチラは、【月下雁】 明治40年 104×41p
【月下の雁】 明治40年作 104×40p
描いているのは、雁だろうけれど、
テーマは月の光・・・・・
月明かりが描ければ、あとはもう何でも描ける。
春草に与えられた天才は、実に実に・・・
広くて深いのです・・・
この御方に一歩でも近づくことが
現代の絵師の目標!
・・・・でなくてはなりません。
クダランものに囚われて・・
真を捉える事・・・
一番大切な事を忘れてはならないのです。
どこぞの亜流に流されている場合じゃあないんです!!
日本画を目指している人は
どんな事があっても、
この春草展だけは観なくては!
それ以上に大切なことは、今、何もない・・・・・のです・・・・
★
菱田春草展
会期 2014年9月23日(火・祝)〜11月3日(月・祝)
会場 東京国立近代美術館
(〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1)
http://www.momat.go.jp/
開館時間 午前10時〜午後5時(毎週金曜日は午後8時まで)
*入場は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日(ただし10/13、11/3は開館)、10/14(火)
主催 東京国立近代美術館、日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション
協賛 損保ジャパン日本興亜、大伸社
協力 旭硝子
助成 公益財団法人ポーラ美術振興財団
お問合せ 03-5777-8600(ハローダイヤル)